財布


写真:優良店による財布メンテナンス。“エルメス”の財布も見違えるほどキレイに仕上がっている。

財布は、バッグや靴と同様にさまざまなブランドの品があり、素材や形状もいろいろです。

メンテナンスの際には、皮革製(牛革・ヌメ革・羊革・蛇革・豚革・クロコなどの型押し革・スムースレザー・サフィアーノレザーなど)、合成皮革製、エナメル製、ビニール製、布製など、財布の素材の性質と、その素材の加工に合う方法を的確に選び、丁寧に処理を施していく必要があります。

優良店による財布のメンテナンスは、このように行われます。

優良店による財布のメンテナンス
素材に最も適した方法を選び、丁寧に財布をクリーニングする
皮革であればクレンジングウォーターでのふき取り、合成皮革やビニールであれば洗浄剤を馴染ませた布でふき取るなど、素材にとって最適の方法でクリーニングする。汚れのつきやすい裏地も、道具を駆使して最大限汚れを除去する
お客さまの希望に応じ、リカラーやエナメル再加工などを施してリペアする
クリーニングで落とし切れなかったシミ・汚れ、表面のキズ・スレは、素材に合わせてリカラーや色替え、エナメル再加工などを施し、リペアする

優良店は、素材に合う方法を選び、丁寧に財布をクリーニングする

財布は、使ううちに人の手から分泌された皮脂が付着して酸化し、やがて少しずつ表面が黒ずんできます。(※特に皮革製の財布に多い。)
そのため、頻繁に人の手指が当たる部分には、重点的にクリーニング処理を施す必要があります。

また、お札やコインを収納する部分には、裏地として布が使われています。
その裏地部分もお札やコインの汚れが移り、黒ずみが付着してしまうことが多いので、きちんと汚れを除去する処理が必要です。

写真:財布のイメージ
たとえば皮革製(牛革・羊革など)の財布であれば、黒ずみ・シミ・汚れに対し、皮革用のクレンジングウォーターが使用されます。
柔らかい布地もしくはスポンジにクレンジングウォーターを適量含ませ、全体をふき取ります。シミや黒ずみがある・汚れている箇所は、皮革がダメージを受けないよう注意しながら、しっかりと拭き取ります。

写真:優良メンテナンス店の財布クリーニング。スポンジにクレンジングウォーターを含ませて、財布の黒ずみを落とす

表面の素材が合成皮革・ビニール製・布製(ナイロンやキャンバス地など)の財布の場合、界面活性剤を含む洗浄剤や、漂白剤を使用することもあります。

財布表面を、洗浄剤を含ませた布で拭き取る・漂白剤をスポンジに含ませてなじませるなどの処理で、シミ・黒ずみ・汚れ・財布の表面に発生してしまった細かなカビなども、きちんと落とします。

漂白剤を使用する際は、ファスナーやスナップボタンなど、金属製の金具の部分を細かくマスキングテープなどで保護してから処理を施します。
漂白剤の成分によって、金具が化学変化を起こして錆が発生してしまうのを防ぐためです。

また、お札やコインを収納する部分・カードポケット部分の布=財布の裏地についてしまった黒ずみは、クリーニング職人の指が届きにくいため、財布の形状に応じて、さまざまな道具を駆使してクリーニングを行います。

歯ブラシ・綿棒・細長いスポンジなど、汚れがついている部分の形状に合う道具を選んで、洗浄剤を含ませて少しずつ擦り、黒ずみ部分の汚れを浮かし出してふき取っていきます。

写真:優良店の財布クリーニングでは、技術者が綿棒を使って、コイン収納部分の黒ずみも丁寧に落としていく。

財布は丸洗い処理をすると、型くずれを引き起こしてしまう恐れがあり、丸洗いができる素材で作られているとしても、丸洗い処理を行うことはありません。
また、財布はカードポケットや小銭入れなど内部の構造も複雑であり、金属製の金具がついている場合が多いため、丸洗い処理はクリーニングの方法として適切ではないと言えます。

優良メンテナンス店の財布クリーニングは、職人による非常に細やかな手作業で、部位ごとに少しずつ汚れを落としていくという根気のいる処理が行われているのです。

お客さまの希望に応じ、リカラーやエナメル再加工などを施してリペアする


写真:皮革にキズがつき、メタリックシルバーの色がハゲている“クロムハーツ”の財布。優良店によるリカラー技術で、キズが目立たない状態にリペアすることができた。

財布のクリーニング処理が終わると、リペア作業の工程に入ります。

お客さまの希望に応じて、いたんだ部分の補修・補強、リカラー、色替え、エナメル再加工、破損してしまったファスナー交換や金具修理・くすんだ金具のメッキ再加工など、キレイな状態に戻すための修理が行われます。

特に皮革製の財布に多く使われる方法として、「リカラー」と「色替え」というリペア技術があります。(※メンテナンス店によっては、リカラー・色替えと同様の手法でも、名称が違うことがあります。リカラーは「色掛け」「色補正」という名称、色替えは「染め直し」など、店ごとに異なる名称で修理メニューに載っている場合があります。)

リカラーは、クリーニングで除去しきれなかったシミや汚れ、細かなキズ、皮革の色のハゲ・ひび割れに効果的な技術です。

リカラーでは、まず職人が染料もしくは顔料を調合し、財布と同じ色を作り出します。そして調合した色を用いて、エアブラシや細筆などの道具を駆使しながら、キズやひび割れ部分に丁寧に着色していきます。

写真:優良メンテナンス店による財布のリペア。ブランド財布を、エアブラシで着色して補修していく

お客様が気にされていた財布の汚れやシミ、キズや色ハゲ、ひび割れも塗り重ねた色でキレイに隠され、目立たない状態に仕上がれば、リカラーは終了です。

また、皮革製・合成皮革製などの財布は、使用にともなう劣化によって、皮革がすり切れる、皮革に穴があく・破れる、というトラブルも起こります。

そのような場合には、リカラーの前に財布の皮革に補強を施します。

すり切れ・破れのある部位に皮革をあてて接着し、補強部分とそのほかの部分の境目が目立たなくなるように、リカラー技術で均一に色を塗りつけてコーティングするように仕上げるのです。

非常に難易度の高い方法ですが、一部の財布メンテナンスの優良店では、皮革の補強技術も提供しています。

写真:優良店のエナメル再加工によるリペア。色移りを起こしてしまっていたエナメルレザーも、再加工によりキレイに修復されている

そのほかにも、ごく一部の優良店のみが取り扱う、非常に難易度の高い技術もあります。国内でも有数の修理店しか扱うことのできない「エナメル再加工」の技術です。

エナメルは、皮革製・合皮製・布製などの各種の素材の中でも、特にトラブルが多発しやすい素材である、と言えます。
ほかの皮革製品などから色移りを起こしてしまった、ボールペンのインクが付いてしまって拭き取っても落ちない、黄ばんでしまった・黒ずんでしまった、夏場の高温多湿環境下で表面にベタつきが発生してしまった、などトラブルに見舞われ、持ち主の方が、財布メンテナンス店にエナメル財布の修理依頼をされることも非常に多いのです。


写真:“ルイ・ヴィトン”モノグラム ヴェルニの財布。赤い色素の色移りジミを、優良店によるエナメル再加工で修復。

エナメルコーティングされた「エナメルレザー(別名:パテントレザー)」は、表面のツルリとした感触から、一見、汚れが付着しにくいように思えます。

しかし、実際はそのようなことはありません。
エナメルコーティングの表面には、ごく細かなミクロの穴が存在しています。その穴からエナメルコーティング内に汚れや色素が入り込み、中の皮革に定着してしまうのです。

その状態になってしまうと、エナメルを一度除去してリペアする「エナメル再加工」をしなければキレイな状態に戻すことはできません。

汚れを拭き取ろうとしても、ミクロの穴の中に入り込んでしまった汚れや色素は、エナメルコーティングの上から拭き取って落とすことは不可能なのです。

エナメル再加工は、まず特殊な除去剤を使用して財布のエナメルコーティングを除去し、中の皮革の汚れを落とす、もしくは染料や顔料を使用して汚れやシミに色を塗り目立たないように隠す、という処理を行います。
その後は、財布の皮革にエナメル加工を再度施し、表面をキレイにコーティングして仕上げます。

財布クリーニングと修理を取り扱う店のなかでも、エナメル再加工を提供している店は、日本国内ではごくわずかです。

それは、財布のリペア技術に習熟した技術者でなければ、エナメル再加工は安易に取り扱うことが出来ない難しい技術である、という証拠なのです。

クリケアは、毎日愛用している財布も、確かな技術を持つ優良店にお手入れを依頼してほしいと考えています。

いたんでしまった、キズがついてしまったから、と、すぐに新品に買い替えるのではなく、高技術のプロの手入れを施しながら、ひとつのモノを長年大切に使う喜びを、多くのひとに体験してもらいたい、と思うのです。

エナメル再加工も、リカラー技術も、永く良いモノを楽しむためにあります。
何十年と愛用し続けたモノは、いつか自分だけの味わいを宿し、宝物のように大切に思えて、生涯手放しがたいひと品となるのではないでしょうか。